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第12章 回数と間隔の整え方 ― やりすぎ・やめられない時の見直し

⏱ 読む時間の目安:約6分

「多すぎるのかな」「やめたいのに、やめられない」。そんなふうに心配になる日もありますよね。でも、数だけで自分を責めなくていいんですよ。大切なのは回数より、あなたが自分で選べているかどうか。一緒に、見直しの道具をそろえていきましょうね。

回数に「正しい数」はありません

毎日する人もいれば、月に数回の人もいます。どちらも、それだけで心配するものではありません(第1章)。WHOの病気の分類の考え方でも、性への関心が高い・回数が多いというだけでは、病気とはみなさないとされています(Kraus ら, 2018)。

回数より先に見てほしいのは、次のようなサインです。

どれにも当てはまらず、罪悪感だけが強い場合もあります。そのときは、「悪いことをしている」という思い込みが、苦しさの元になっていないか見直してみましょう。この考え方は、コラム「AI時代の一人時間論」でくわしくたどっています。

WHOの「強迫的性行動症」という考え方

WHOの病気の国際的な分類(ICD-11)には、「強迫的性行動症」という診断があります。強くくり返し起こる性的な衝動をおさえられない状態が、長い期間(たとえば6か月以上)続く。そのために、強い苦しみや、家庭・人づきあい・仕事などへの大きな支障が出ている。そんな状態のことです(Kraus ら, 2018)。

この診断には、ほかにも大事な決まりがあります。

つまり、「回数が多い=病気」ではないんです。「自分で選べていない」「生活が苦しくなっている」が続くときに、相談を考える目安になります。

オナ禁(禁欲)で分かっていること・分かっていないこと

「しばらくやめれば、すっきりする」と考えて、オナ禁を試す人も多いですよね。ただ、きちんと比べた研究は、まだ多くありません。

英国で、成人176人をくじ引きで2つのグループに分けた研究があります。週3回以上アダルト作品を見ている人たちです。片方は7日間、作品を見ないようにし、もう片方はいつもどおり過ごしました。その結果、見たくなる気持ちの強さ、気分の良し悪し、やめた時に出るような不調のどれにも、2つのグループで差は見られませんでした(Fernandez ら, 2023)。追加の分析では、ほぼ毎日見ていて、自分の見方に強い問題を感じている人に限って、やめた側で「見たい気持ち」が強めでした。ただし、研究者自身が「慎重に受けとめるべき」としています。

この研究には限界もあります。参加者の6割以上が女性でした。やめたのは「作品を見ること」で、自慰そのものではありません。期間も7日だけです。長くやめるほど体によい、とまでは言えません。

ここから言えるのは、短い期間やめてみること自体は、多くの人にとって大きな負担にならないかもしれない、ということです。試すなら、「1週間」など終わりを決め、途中でやめても自分を責めないでくださいね。

見直しの手順:記録する・引き金を知る・代わりを用意する

やりすぎが気になるときは、がまん比べより、しくみを知るほうが近道です。次の順に進めてみましょう。

衝動が浮かぶこと自体は、止められなくて当たり前です。浮かんだ気持ちを無理に消そうとするより、「来たな」と気づいて、そのあと何をするかを選ぶ練習が大切なんです。この考え方をもとにした心理療法(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の研究があります。作品を見ることに悩む成人男性28人を、12回の面接を受けるグループと、順番待ちのグループに分けました。見る時間は、面接のグループで93%、順番待ちのグループで21%減りました(Crosby と Twohig, 2016)。ただし、小さな研究です。参加者もほぼ全員が同じ宗教の信者でした。生活の満足度が上がったという証拠は得られなかった、と研究者自身が書いています。だれにでも同じ結果が出るとは限りません。

見直しの4つの手順 1 記録する いつ・どこで・その前の気分 2 引き金を知る 疲れ・退屈・寝床のスマホ 3 代わりを用意する 散歩・シャワー・ストレッチ 4 小さな決まりを1つ試す 2週間たったら見直す
4まで進んだら、また1の記録に戻ってくり返します。うまくいかなかった週も、引き金を知る材料になります(手順は、この章で整理した目安です)。

ひとりで抱えこまないで:相談先

手順を試しても変わらない、生活への支障が大きい。そんなときは、相談してかまいません。厚生労働省は、「やめたくても、やめられない」と感じたら、近くの保健所や精神保健福祉センターに相談するよう案内しています。精神保健福祉センターは各都道府県と政令指定都市にあり、「こころの健康センター」などの名前のこともあります。電話や面接で相談でき、医師や保健師などの専門職が対応します。

医療機関では、精神科・心療内科が窓口です。性の悩みを専門に聞いてもらいたいときは、日本性科学会のカウンセリング室もあります(第6章)。よくある質問への答えは、お悩みQ&Aにもまとめています。

ここに書いた目安は、自分で診断するためのものではありません。迷ったときも相談してかまいません。相手の同意のない行為をしてしまいそうなとき、誰かを傷つけてしまいそうなときは、すぐに専門の窓口や医療機関に相談してください。

「やめられない」と悩めるのは、あなたが自分の暮らしを大事にしたいと思っている証なんですよ。数字に振り回されず、自分で選べる毎日を、少しずつ取り戻していきましょうね。

詳しくは、コラム「「オナ禁」は体にいいのか ― 研究で分かっていること・分かっていないこと」も、あわせて読んでみましょう。

詳しくは、コラム「アダルト作品との距離の取り方」も、あわせて読んでみましょう。

修行のお題 これから1週間、した日だけ「時間帯・場所・その前の気分」を1行ずつ記録してみましょう(記録アプリ「修行帳」でも、紙のメモでもかまいません)。1週間後に見返して、いちばん多かった場面を1つだけ丸で囲んでみてくださいね。

参考にした資料

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