第11章 想像で高める練習 ― 動画に頼りすぎないために
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動画は、ひとりの時間の心強い相棒ですよね。使うこと自体を、わたしは責めたりしませんよ。ただ、「動画がないと高まらない」と感じ始めたら、少しだけ想像の力も育ててみませんか。頭の中の世界は、いつでも、どこへでも持っていける道具なんです。
動画を使うこと自体は、悪いことではありません
大人が合法な作品を楽しむのは、それだけで問題になることではありません。この章で目指すのは、動画を「やめる」ことではないんです。動画が「あってもなくても高まれる」ように、引き出しを増やすことです。
想像で高める力があると、こんな場面で助けになります。
- 動画を見られない場所や時間でも、落ち着いて楽しめる
- パートナーとの時間に、画面の中の刺激と比べにくくなる
- 自分が本当に好きなものは何か、気づきやすくなる
「見すぎかも」という心配や、やめられない時の考え方は、第12章とお悩みQ&Aでも扱っています。
研究で分かっていること・分かっていないこと
「動画を見すぎると、勃起しにくくなる」という話を、聞いたことがあるかもしれません。研究の結果は、実は分かれています。両方を並べてみますね。
はっきりした関係は見られなかった、という研究:クロアチア・ノルウェー・ポルトガルの40歳以下の男性2,737人と、クロアチアの男性1,211人を調べた研究があります。見る回数と、勃起・射精・性欲の悩みとの関係は、一部で小さく見られただけで、一貫しませんでした。2つ目の調査では、関係は見られませんでした(Landripet と Štulhofer, 2015)。米国の3つのグループの男性を調べた研究もあります。見る量そのものと勃起の悩みには、一貫した関係がありませんでした。ただし「自分の見方に問題がある」と感じている人ほど、その時点で勃起の悩みも多い傾向がありました。1年間追いかけた調査では、どの項目も、その後の勃起の変化とは結びついていませんでした(Grubbs と Gola, 2019)。
関係が見られた、という研究:米国の泌尿器科を受診した20〜40歳の人を調べた研究があります。見る回数や時間と勃起の力には、関係が見られませんでした。一方で、「パートナーとの性行為より、動画を見ながらの自慰のほうが好き」と答えた男性では、勃起の悩みがある割合が78%でした。動画なしでパートナーとの性行為を好む男性では、22.3%でした(Berger ら, 2019)。
どの研究も、ある時点のアンケートが中心です。「関係がある」と分かっても、動画が原因なのか、もともと悩みのある人が動画を好むのかは、区別できません。今言えるのは、「見る量そのもの」より、「動画でないと高まれない」「動画のほうが好き」という頼り方のほうが、悩みと結びつきやすいかもしれない、というところまでなんですよ。
「刺激の強さに慣れる」という考え方
研究者の中には、こう考える人たちもいます。ネットの動画は、いくらでも新しいものが見つかり、より強い内容へ進みやすい。そのため、高まり方が画面の刺激に結びつき、実際のパートナーとの時間では物足りなく感じることがあるのでは、という考えです。動画をやめたら悩みが軽くなった、という診察の記録も報告されています(Park ら, 2016)。
ただし、これは研究の方向を示した「仮説」です。記録も数人の例にとどまります。研究者自身も、動画をやめる群をつくって確かめる研究が必要だと書いています。第4章の強すぎる握りの話と同じで、「いつも同じ強い刺激」に慣れると、やさしい刺激で届きにくくなることはありえます。だからこそ、刺激の種類を広げておくと安心、くらいに受けとめてくださいね。
動画なしで高める、段階的な練習
いきなり動画をゼロにする必要はありません。少しずつ、想像に任せる部分を増やしていきます。
- 段階1:いつもどおり動画で高め、最後の数分だけ目を閉じて、想像で終える
- 段階2:動画は始めの数分だけ。途中で画面を消して、想像に切りかえる
- 段階3:動画を使わず、好きな場面や思い出を、頭の中で思い浮かべる
- 段階4:想像と、手の感覚・呼吸だけで、最後まで進む
想像がうまく続かない時は、こんな工夫が役に立ちます。
- 場面を細かく思い描く:場所、明かり、温度、音、香りまで、ひとつずつ足していく
- 手の感覚に注意を戻す:想像がとぎれたら、責めずに、手の感触と呼吸に戻る(第3章の集中のしかた)
- 高まりを0〜10で感じる:想像だけで、いくつまで上がるかを確かめる
はじめは、動画の日より時間がかかったり、届かなかったりするのがふつうです。届かなくても、「想像だけで5まで上がった」なら、それは立派な前進なんですよ。
動画を使う日と、使わない日の分け方
「今日はどっちにしよう」と、その場で決めると、つい動画に手が伸びやすくなります。先に、ゆるい決まりをつくっておくのがこつです。
- 曜日で分ける:たとえば週のうち2日を「想像の日」にする。残りは動画を使ってよい日
- 始める前に決める:動画を使う日は、見る時間の長さを先に決めて、タイマーをかける
- 探す時間をへらす:作品を探しているうちに時間が延びる人は、見るものを先に1本だけ選んでおく
- 記録する:想像の日に、どこまで高まれたかを0〜10でメモする
「想像の日」は、がまんの日ではありません。自分の頭の中の好みを探る、実験の日なんです。ひとりの時間をどう大切にするかは、コラム「AI時代の一人時間論」も読んでみてくださいね。
動画のあるなしにかかわらず、勃起しにくい状態が続くときは、からだの病気が隠れていることもあります。泌尿器科に相談しましょう(第6章)。また、見る時間が増えすぎて、仕事や生活、人間関係に困りごとが出ているときは、第12章の見直しの手順と相談先を確かめてください。
画面の向こうの世界も楽しいけれど、あなたの頭の中には、あなただけの特別な世界があるんですよ。ゆっくり、その扉を開けていきましょうね。
詳しくは、コラム「アダルト作品との距離の取り方 ― 見すぎが心配な時の目安と相談先」も、あわせて読んでみましょう。
修行のお題 この1週間のうち1日を「想像の日」に決めて、段階1を試してみましょう。最後の数分だけ目を閉じて、想像で何点まで高まれたかを、0〜10でメモに1行残してみてくださいね。
参考にした資料
- Landripet I, Štulhofer A(2015)Is Pornography Use Associated with Sexual Difficulties and Dysfunctions among Younger Heterosexual Men? Journal of Sexual Medicine
- Grubbs JB, Gola M(2019)Is Pornography Use Related to Erectile Functioning? Results From Cross-Sectional and Latent Growth Curve Analyses. Journal of Sexual Medicine
- Berger JH ら(2019)Survey of Sexual Function and Pornography. Military Medicine
- Park BY ら(2016)Is Internet Pornography Causing Sexual Dysfunctions? A Review with Clinical Reports. Behavioral Sciences