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「オナ禁」は体にいいのか ― 研究で分かっていること・分かっていないこと

⏱ 読む時間の目安:約6分

「オナ禁(オナニーをしばらくやめること)で集中力が上がる」「自信がつく」「肌がきれいになる」。インターネットでは、こうした体験談をよく見かけます。海外には、90日間やめることをすすめる大きな集まりもあります。けれど、体にとって本当にいいことなのでしょうか。このコラムでは、ホルモン・前立腺・精子の研究を順に確かめ、分かっていることと、確かめられていないことを分けて書きます。試すかどうかは、それを読んでから決めてください。

ホルモンの研究:テストステロンは上がる?

オナ禁の話でよく出てくるのが、男性ホルモンのテストステロンです。

どちらも人数がとても少ない研究です。そして、この程度のホルモンの変化が、集中力や自信、見た目の変化につながると確かめた研究は見つかりませんでした。「7日目に山がある」ことと、「長くやめるほど体によい」ことは、別の話です。

前立腺の研究:出す回数が多い人ほど…

アメリカの医療職の男性31,925人を18年間追いかけた研究では、月に21回以上射精していた人は、月4〜7回の人に比べて、のちに前立腺がんと診断される割合が低めでした(20代の頃の回数で0.81倍、40代の頃の回数で0.78倍)。差は主に、進行の遅いタイプのがんで見られました(Rider ら, 2016)。

これは、生活をたずねて追いかけた「観察の研究」なので、射精ががんを防ぐとまでは言えません。ただ少なくとも、「長くためるほど前立腺に良い」という裏付けにはなっていません。

精子の検査では「2〜7日」

世界保健機関(WHO)の精液検査の手引き(2021年)では、検査の前に射精を控える期間を2〜7日としています。手引きには、精子は精巣の上にある精巣上体(せいそうじょうたい)にたまり、いっぱいになると尿道へあふれて、尿と一緒に流れ出ていくとも書かれています。体の中で精子が無限にたまっていくわけではなく、使われなかった分は、体が自然に外へ出していくのです。

数字で見る「ためる・出す」の研究どれも「長くやめるほど良い」という裏付けではない145.7%7日目の山射精後に毎日測ったテストステロン(28人)。2〜5日目はほぼ変わらず、山は7日目だけ(Jiang ら,2003)0.78倍前立腺がんの診断40代に月21回以上の人を、月4〜7回の人と比べて。観察の研究(Rider ら,2016)2〜7日検査前の期間精液検査の前に射精を控える期間。WHOの手引き(2021年)。使われない精子は尿と一緒に出ていく
本文の研究の数字をまとめた図です。人数の少ない研究や、因果までは分からない研究を含みます。

オナ禁したくなる理由:研究が示すもの

ドイツの研究者は、インターネットで1,063人に調査をしました。64.2%が、少なくとも一度はオナ禁を試したことがあると答えています。「やめたい」という気持ちの強さは、実際のオーガズムの回数とは関係が見られず、「オナニーは体に悪い」と考える気持ちや、「人づきあいに影響する」と考える気持ちと強く結びついていました(Zimmer & Imhoff, 2020)。

つまり、オナ禁をしたくなる理由は、回数が多すぎることより、「悪いことだ」という思い込みから来ている場合が多いのかもしれません。オナニーを「損」とみなす考え方がどこから来たのかは、AI時代の一人時間論でくわしくたどっています。

ネットの主張と、研究の今

よく見かける主張を、ここまでの研究で確かめられた度合いで並べると、下の図のようになります。とくに、集中力・自信・肌といった「生活が変わる」主張ほど、体験談しか見つかりませんでした。

ネットの主張と、研究の今△ 一部だけ× 裏付けが見つからないテストステロンが上がる一時的な変化は小さな研究で報告。体の変化につながるかは不明集中力が上がる・自信がつく・モテる体験談のみ。確かめた研究は見つからなかった肌がきれいになる確かめた研究は見つからなかった精子が濃く、元気になる検査の目安は2〜7日。長いほどよいわけではないやめたい気持ちの強さは、回数より「体に悪い」という考えと結びついていた(1,063人の調査)
出典:Jiang ら(2003)、Exton ら(2001)、WHO(2021)、Zimmer & Imhoff(2020)。

それでも試してみたい人へ

やめてみること自体が体に害になる、という研究もありません。気分転換や、自分の習慣を見直す「実験」として試すのは自由です。その時は、次の3つを意識すると、つらくなりにくいでしょう。

反対に、「やめたいのに何度やってもやめられない」「生活や仕事が後回しになっている」と感じる時は、がまん比べより相談が近道です。目安と相談先はアダルト作品との距離の取り方にまとめています。

ここで紹介した研究は、男性を対象にしたもので、人数の少ないものも含みます。オナ禁で体調がよくなる、または悪くなる、とは約束できません。射精の時の痛みや、性器の腫れ・しこりなど、いつもと違う症状がある時は、回数の工夫ではなく泌尿器科で相談してください。

修行のお題 オナ禁を試すかどうか決める前に、まず1週間、回数とその日の気分・眠り・集中を、記録アプリ「修行帳」に書いてみましょう。数字で見ると、自分にとって「ちょうどよい間隔」が見えてきます。

参考にした資料

📜 オナニー道の心得📓 記録アプリ「修行帳」