アダルト作品との距離の取り方 ― 見すぎが心配な時の目安と相談先
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アダルト動画や漫画は、一人時間の心強い相棒です。けれど、「最近、見る時間が長すぎるかも」「これって依存なのでは」と不安になることもあると思います。このコラムでは、研究で分かっていることをもとに、心配しすぎなくてよい場合と、相談したほうがよい場合の目安を分けて書きます。そのうえで、ほどよい距離を保つ工夫と、出演者を守る法律の話、相談先をまとめます。
見ること自体は、悪いことではない
大人が合法な作品を楽しむことは、それだけで問題になるものではありません。一方で、「自分は依存しているのでは」と感じて苦しむ人がいるのも事実です。アメリカの研究者たちは、これまでの研究をまとめ、その苦しさの多くは、見る量よりも、「見てはいけない」という自分の考えと、実際の行動とのずれから生まれている場合がある、という考え方を示しました(Grubbs ら, 2019)。
つまり、「こんなものを見る自分はだめだ」と責める気持ちが、不安を大きくしていることがあるのです。まずは、責めるのを少しお休みしてかまいません。
「見すぎると体が変わる」は本当?
「アダルト動画を見すぎると、勃起しにくくなる」という話を聞いたことがあるかもしれません。クロアチア・ノルウェー・ポルトガルの若い男性、のべ約4,000人を調べた研究では、見る回数と、勃起・射精・性欲の悩みとのあいだに、はっきりした関係は見つかりませんでした(Landripet & Štulhofer, 2015)。
ただし、これはある時点の調査で、「まったく関係がない」と言い切れるほどの証拠でもありません。強い刺激に慣れて、ふたりの時に届きにくくなる、という悩みは実際によく聞かれます。気になる方は、刺激を少しずつやさしくしていく方法を、男性編の「やめたい癖と直し方」の章で紹介しています。
依存が心配な時の目安
世界保健機関(WHO)の病気の分類(ICD-11)には、「強迫的性行動症」という診断があります。その考え方では、次のような状態が6か月以上続き、強い苦しさや、仕事・家庭・人づきあいへの大きな支障がある時に、はじめて問題とされます(Kraus ら, 2018)。
- 性の行動が生活の中心になり、健康や身の回りのこと、ほかの楽しみや責任が後回しになっている
- やめよう、減らそうと何度も試みたのに、うまくいかない
- 困ったこと(関係のこじれ、仕事への影響、体への悪影響)が起きても続けてしまう
- 楽しさをほとんど感じないのに、続けてしまう
反対に、関心が強い・回数が多いというだけでは、診断の対象になりません。また、道徳的に「よくない」と感じることから来る苦しさだけでも、診断の根拠にはしない、とされています。
ほどよい距離を保つ工夫
- 時間を先に決める:始める前に「30分まで」など終わりの時刻を決め、タイマーをかける。作品を探す時間が長くなりがちな人ほど効きます
- 寝床に持ち込まない:寝床でスマホを見る習慣は、夜ふかしと睡眠不足につながります(眠れない夜と一人時間)
- 見ない日をつくって観察する:週に1〜2日、見ない日をつくり、その日の気分を記録する。がまん比べではなく、自分の様子を知るための観察です
- 想像だけの日を試す:作品なしで、自分の想像やからだの感覚に集中する日をつくると、刺激の幅が広がります
- 作品は「見せるための演出」と知っておく:作品の中の流れや強さは、撮影のために作られたもの。ふたりの時間の手本にはせず、相手の同意と気持ちを優先しましょう
出演者を守る法律と、作品の選び方
日本では2022年に「AV出演被害防止・救済法」ができました。内閣府男女共同参画局によると、主なポイントは次のとおりです。
- 契約書などを渡してから1か月は撮影してはいけない。撮影の時は出演者の安全を守り、出演者はいやな行為を断れる
- すべての撮影が終わってから4か月は公表してはいけない。出演者は公表前に映像を確かめられる
- 出演者は、公表から1年間は、理由がなくても契約を解除できる(契約した時期によって期間は異なる)
こうした手続きをふんだ作品を選ぶことは、出演者を守ることにつながります。作品は、正規の販売・配信サービスで選びましょう。出どころの分からない動画は、出演者の同意が確かめられません。
相談先
「やめたいのに、やめられない」「生活に支障が出ている」と感じたら、ひとりで抱えこまずに相談してください。厚生労働省は、依存症かもしれないと思ったら、まずは近くの保健所や精神保健福祉センター(「こころの健康センター」などの名前のこともあります)に相談するよう案内しています。精神保健福祉センターは各都道府県・政令指定都市にあり、電話や面接で相談でき、医師や保健師などの専門職が対応します。家族や知人のことで悩んでいる方も相談できます。
医療機関では、精神科・心療内科が窓口になります。罪悪感だけが強く、行動そのものは困っていない場合も、カウンセリングで気持ちが軽くなることがあります。
ここに書いた目安は、自分で診断するためのものではありません。当てはまるかどうか迷う時も、相談してかまいません。性の行動で誰かを傷つけてしまいそうな時、相手の同意のない行為をしてしまいそうな時は、すぐに専門の窓口に相談してください。
修行のお題 これから1週間、作品を見た日は「見た時間」と「見たあとの気分(すっきり・ふつう・もやもや)」を、記録アプリ「修行帳」にメモしてみましょう。もやもやが続く日が多ければ、時間を決める工夫から試してみてください。
参考にした資料
- Grubbs JB ら(2019)Pornography Problems Due to Moral Incongruence: An Integrative Model with a Systematic Review and Meta-Analysis. Archives of Sexual Behavior
- Landripet I, Štulhofer A(2015)Is Pornography Use Associated with Sexual Difficulties and Dysfunctions among Younger Heterosexual Men? Journal of Sexual Medicine 12(5)
- Kraus SW ら(2018)Compulsive sexual behaviour disorder in the ICD-11. World Psychiatry 17(1)
- 内閣府男女共同参画局「法律の内容を知りたい方へ(AV出演被害防止・救済法)」
- 政府広報オンライン「AV出演被害防止・救済法が施行」
- 厚生労働省「依存症対策」