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第15章 トラブルを防ぐ ― 膀胱炎・カンジダ・性感染症と検査

⏱ 読む時間の目安:約6分

極意の締めくくりは、「長く楽しむための守り」なんだ。ひとりの時間も、道具を使う時も、パートナーとの時間も、体のトラブルとまったく無縁ではいられない。でも、しくみを知っていれば、防げることも、早く気づけることも増える。こわがらせたいわけではないよ。安心して続けるための話をしよう。

基本は、手と道具の清潔

トラブルを防ぐ土台は、これまでの章で話してきたことなんだ。始める前と終わったあとに手を洗う。爪を短く、角を丸くしておく。道具は使う前と後に洗って、よく乾かす。くわしい手順は第2章と第5章にまとめてあるから、ここでは繰り返さないよ。

この章で足したいのは、ひとつだけ。道具は自分専用にしておくということだ。その理由を、次の節で見てみよう。

道具の共有と、性感染症

アメリカで、12人の女性に2種類の振動する道具を使ってもらった研究がある。素材のちがう2つで、ひとつは表面に細かいすき間のある樹脂(熱可塑性エラストマー、TPE)、もうひとつはシリコンだ。使った直後、市販の洗浄剤で洗った直後、洗ってから24時間後に、道具の表面を綿棒でぬぐって調べた(Anderson ら, 2014)。

著者たちは、道具を共有するとHPVがうつる可能性がある、と結論している。洗えば見つかる割合は下がるけれど、ゼロにはならなかったんだ。

これはたった12人の小さな研究なんだ。見つかったのはウイルスの遺伝子で、実際にうつったことまでは確かめていない。それでも、道具を自分専用にしておけば、この心配はぐっと小さくできる。パートナーと一緒に使う時の話は(第14章)で扱うよ。

膀胱炎:防ぐために言われていること

膀胱炎は、おしっこをためる袋(膀胱)に菌が入って起こる炎症だ。イギリスの国民保健サービス(NHS)によると、多くはおしりの近くの菌が、尿の出口から入りこんで起こる。女性は尿の通り道(尿道)が短いので、菌が膀胱に届きやすい。性行為や、後ろから前へふくことも、起こりやすくする要因に挙げられているよ。

NHSが、くり返しやすい人に向けてすすめている工夫は次のとおり。

根拠の強さについても、正直に言っておこう。これらは公的機関がすすめる生活の工夫だ。けれど、ひとつひとつがどのくらい効くのかを確かめた研究は、この章を書く中では見つけきれなかった。クランベリーの飲み物や製品については、NHSは「予防に役立つかもしれない」としている。ただし、すでに始まった膀胱炎を治す根拠はない、とも書いているよ。

おしっこの時の痛み、何度も行きたくなる、にごりやにおい、といった症状が3日たってもよくならない時は、医療機関へ。血がまじる、熱が出る、背中やわき腹が痛む時は、腎臓まで菌が広がっているおそれがあるので、早めに受診してね(NHS)。

カンジダは、性感染症とは限らない

強いかゆみと、白く厚いおりもの。そんな症状で知られる腟カンジダ症は、カビのなかま(カンジダ)が増えすぎて起こる。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の治療指針によると、女性の約75%が一生に一度はかかり、40〜45%は2回以上かかると見積もられている。症状のない女性の10〜20%も、腟にカンジダをもっているそうだ。

そして大事なのが、ふつうのカンジダ症は、ふつう性行為でうつったものではない、という点なんだ(CDC)。CDCは、健康な人のふつうのカンジダ症では、多くの場合はっきりしたきっかけが見つからない、とも書いている。だから、かかっても自分を責めなくていいし、「誰かにうつされた」と決めつけなくていいんだよ。

ただし、CDCは、前にカンジダと診断されたことがある人でも、自分で正しく見分けられるとは限らないと書いている。市販の薬を使っても治らない時や、2か月以内にぶり返した時は、受診して検査を受けるように、とね。似た症状の別の病気もあるから、迷ったら婦人科へ行こう。

性感染症の検査を受けるには

厚生労働省の「性感染症検査・相談マップ」は、次のような症状は性感染症かもしれない、としている。性器のしこり・ただれ・かゆみ、皮ふの発疹や水ぶくれ、おりものの増加やにおい、おしっこの時の痛み、生理以外の出血などだ。

どこに行けばいいか迷った時は、第6章も見てね。

3つのトラブル 見分けのヒント 膀胱炎 おしっこの痛み・回数が増える 性交のあとに起きやすい人も カンジダ 強いかゆみ・白く厚いおりもの 性交でうつるとは限らない 性感染症 おりものの変化・しこり・ただれ 保健所で無料・匿名の検査も
症状は重なることが多く、見た目だけでは区別できない。あくまで目安として使い、気になる時は受診や検査を(NHS「Cystitis」、CDC「Vulvovaginal Candidiasis」、厚生労働省「性感染症検査・相談マップ」をもとに作成)。

検査を受けるのは、誰かを疑うことではないんだ。自分の体の「今」を確かめる、いちばん確かな方法なんだよ。

子宮頸がん検診とHPVワクチン

厚生労働省の資料によると、性交経験のある人の多くは、一生に一度はHPVに感染すると言われている。多くの人では数年以内にウイルスが消える。けれど、そのうち数%は感染が続き、がんになる手前の状態(前がん病変)を経て、その一部ががんに進む。日本では毎年約1.1万人が子宮頸がんにかかり、約3,000人が亡くなっているそうだ。

防ぐ方法は2つある。ひとつはHPVワクチン。がんになる手前の状態を防ぐ効果が、日本や海外の調査で示されている。ただ、ワクチンで防げない型のHPVもある。だから、ワクチンを打ったかどうかにかかわらず、子宮頸がん検診を定期的に受けることが大切だとされているんだ(厚生労働省)。

検診について、国は20歳以上の女性に、2年に1回の受診をすすめている(国立がん研究センター)。ワクチンを公費で受けられる対象や、自費で受ける場合のことは、年度によって変わることがある。厚生労働省のページや、かかりつけの婦人科で確かめてね。

守りを固めることは、楽しみをあきらめることではないんだ。安心という土台があってこそ、心も体もほどけていく。それがこの道の、最後の極意だよ。

修行のお題 このあと5分だけ使って、「前回の子宮頸がん検診はいつだったか」を確かめよう。2年以上たっていたら、市区町村の検診の案内か、近くの婦人科の予約ページを1つ開いて、カレンダーに予定を入れてみてね。

参考にした資料

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