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第9章 デリケートゾーンの洗い方とおりもの

⏱ 読む時間の目安:約6分

「においが気になって、つい念入りに洗ってしまう」。そんな人は少なくないんだ。けれど、体にはもともと、自分をきれいに保つ力がそなわっている。洗いすぎは、その力のじゃまをしてしまうこともある。入門の九歩目は、毎日のお手入れと、おりもののサインの読み方だよ。

腟には、自分できれいにする力がある

腟の中には、体を守る菌がすんでいる。乳酸菌のなかまだ。アメリカ産科婦人科学会(ACOG)の解説によると、女性ホルモン(エストロゲン)がこの菌の育ちを助けている。この菌がつくる物質のおかげで、腟の中は少しすっぱい状態(弱酸性)に保たれる。そのすっぱさが、病気を起こす菌から腟を守っているんだ。健康な腟には、カビのなかま(カンジダ)がいることもある。それでも、すっぱさのおかげで増えすぎずにすんでいる。

おりものにも役目がある。ほとんどが水分で、体の役に立つ菌をふくんでいる。腟の内側からはがれた古い細胞を外へ運び出して、自然にきれいにしてくれているんだ(ACOG)。この働きを、まとめて「自浄作用」と呼ぶよ。

洗うのは外側だけ、やさしく

ACOGとイギリスの国民保健サービス(NHS)がすすめる洗い方を、順番にまとめてみよう。

合言葉は「やさしく、こすらず」なんだ。陰毛の手入れについては、陰毛のコラムにまとめてあるよ。

腟の中を洗わない理由

腟の中に水や液を入れて洗うことを、腟洗浄(ちつせんじょう)と呼ぶ。アメリカ保健福祉省の女性の健康局(OWH)は、医師の多くが腟洗浄をすすめていない、と説明している。腟の中の菌のバランスと、すっぱさをくずしてしまうからだ。その結果、よくない菌が増えやすくなる。週に1回洗う人は、洗わない人に比べて、腟の菌のバランスがくずれる病気(細菌性腟症)に5倍なりやすかったそうだ。

日本の産婦人科の専門誌でも、医師が同じことを書いている。自分で行う腟洗浄は、洗う液を使っても使わなくても、守り役の乳酸菌を減らしてしまう。それが婦人科の感染症のきっかけになることがあるので、すすめられない、とね(金山, 2022)。日本で行われている腟洗浄の多くは、医師が薬と組み合わせて行うもので、洗浄だけの効果ははっきりしていないそうだ。

OWHは、腟洗浄が病気の原因なのか、もともと病気になりやすい人が洗っているのかは、まだ研究中だとも書いている。それでも、洗うことで健康によいと示した研究は見つかっていない。においが気になって洗いたくなった時こそ、洗わずに受診を考えよう。OWHは、受診の前にも洗わないように、と伝えているよ。調べにくくなるからなんだ。

おりものは、周期で変わる

ACOGによると、いつものおりものは透明から白っぽい色で、目立つにおいはない。量や性質は、月経周期のあいだに変わっていく。少しのにおいがあるのは、ふつうのことだと書かれているよ。

NHSの解説では、次のようなおりものは、ふだんは心配いらないとされている。

生理と生理のあいだの排卵のころは、より透明で水っぽくなり、量が増えて気づきやすい。妊娠中や、性の活動がある時期、避妊の方法によっても増えることがある(NHS)。

受診したい色・におい・かゆみ

NHSは、においや色、質感が変わった時は、感染症のサインかもしれない、としている。たとえば次のような時だ。

ACOGによると、よくある腟のトラブルは2つある。ひとつはカンジダが増えすぎること(腟カンジダ症)で、外陰部のかゆみや焼けるような感じがおもな症状だ。抗生物質を飲んだあとや、妊娠中、潤滑剤や殺精子剤の使用などがきっかけになることがある。もうひとつは、腟にもともといる菌が増えすぎること(細菌性腟症)で、魚のようなにおいの強いおりものが増えるのがおもな症状だ。こちらは性行為の経験があるかどうかにかかわらず、誰にでも起こりうるとされている。どちらも、くずれた菌のバランスがかかわっているんだ。

ほかにも、かゆみやひりひり感がある、生理以外の時や性行為のあとに出血する、おしっこの時に痛む、といった時は相談のサインだ。自分で病名を決めつけずに、婦人科で診てもらおう。受診の目安や何科に行くかは第6章に、カンジダなどのトラブルの予防は第15章にまとめてあるよ。

おりものの見分け早見表 いつもの範囲 受診を考えたい 色透明〜白緑や黄色 におい強いにおいはない魚のようなにおい 質感ねばねば〜ぬるっとカッテージチーズ状 ほか排卵のころ増えるかゆみ・痛み・出血 迷ったら自己判断せず受診を
いつものおりものと、受診を考えたいサインの目安。あてはまっても病気とは限らず、あてはまらなくても気になる時は相談してよい(NHS「Vaginal discharge」、ACOG「Vulvovaginal Health」をもとに作成)。

おりものは、体が毎日書いてくれる日記のようなものなんだ。いつもの字を知っていれば、乱れた日にすぐ気づけるよ。

下着と生理用品の工夫

ACOGは、空気が通るようにする工夫として、次のことを挙げている。

タンポンや月経カップを使う人は、とてもまれだけれど命にかかわる病気(トキシックショック症候群)も知っておこう。NHSは予防として、手を洗い、説明書を守ること、必要以上・指定以上に長く入れたままにしないことを挙げている。急な高い熱、紙やすりのような発疹、筋肉の痛み、めまいなどが出たら、すぐに取り出して救急に相談してね。

お手入れの極意は「足すより、引く」なんだ。洗いすぎず、香りを足さず、空気を通す。体の守り役たちが働きやすい場所をつくってあげよう。

修行のお題 この1週間、お風呂でのお手入れを「外側だけ・ぬるま湯か香りのない石けん・最後はタオルで押さえる」の3つにそろえてみよう。あわせて、家にある香りつきのシートやスプレーを1つ見直してみてね。

参考にした資料

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