第10章 自分の形を知る ― 鏡で見る観察と、形の多様さ
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第1章で、外から見える部分の名前を覚えたね。今度は、自分の形をじっくり見てみる番なんだ。「わたしの形、変じゃないかな」と気にしている人ほど、この章を読んでほしい。入門の最後の一歩は、形の幅の広さを知ることと、ふだんの自分を覚えておくことだよ。
なぜ、自分の形を見ておくの?
アメリカ産科婦人科学会(ACOG)は、自分の外陰部の「いつもの状態」をよく知っておくのはよいことだ、と書いている。肌の色の変化(赤み、濃い点や白っぽい点)、新しいほくろやできもの、治らない腫れ・かゆみ・ひりひり感に気づいたら、婦人科で相談するように、とね。
見たことがなければ、変わったかどうかも分からない。観察は、自分を守るための地図づくりなんだ。それに、自分の目で見て「こういう形なんだ」と分かるだけで、ほっとする人もいるよ。
鏡で観察する手順
イギリスのニューカッスル病院群(NHSの病院)の案内をもとに、手順をまとめよう。
- 手を洗い、明るくて、ひとりになれる場所を選ぶ
- 楽な姿勢で座り、手鏡を片手で持つ
- 上から順に見ていく。恥丘、クリトリスのあたり、内側のひだ(小陰唇)、外側のひだ(大陰唇)、腟と肛門のあいだ(会陰)、そして肛門まで
- 外側のひだを指でそっと開くと、内側が見やすい
- 見るだけでなく、指でそっとふれて、しこりや、皮ふが厚くなったところがないかも確かめる
同じ案内では、月に1回、生理と生理のあいだに行うこと、かゆみや痛みが出た時にも見ることをすすめている。部分の名前が分からなくなったら、第1章に戻ってね。
痛みがある時や、気持ちがつらくなる時は、無理に続けなくていいよ。また、写真に撮って残すのはおすすめしない。思わぬところで人の目にふれるおそれがあるからね。見たことは、文字でメモしておけば十分なんだ。
形は、本当に人それぞれ
ロンドンの病院で、閉経前の女性50人の外陰部を測った研究がある。外側の手術ではない婦人科の手術のため、麻酔がかかっているあいだに測ったものだ。その結果、どの部分も大きさの幅がとても広かった(Lloyd ら, 2005)。
- 内側のひだ(小陰唇)の長さ:20〜100mm(平均は約61mm)
- 内側のひだの幅(つけ根からふちまで):7〜50mm(平均は約22mm)
- クリトリスの先端の幅:3〜10mm
- 外側のひだ(大陰唇)の長さ:7〜12cm
- クリトリスから尿の出口までの距離:16〜45mm
最後の距離は、第1章で紹介した「届きやすさとの関係」の研究に出てきたものだね。ここにも、3倍近い幅があるんだ。
そのうえ、こうした大きさは、年齢や出産の経験、民族、ホルモン剤の使用、性の経験とは、はっきりした関係が見られなかった。以前は、内側のひだの幅が4cmを超えると「大きすぎる」として手術の対象にする考え方もあった。けれど実際の幅は、それよりずっと広かったんだ。しかもこの50人の中に、自分の形に困っている人や、手術を望んでいる人はいなかった。
スイスで、幅広い年代の657人を測った研究もある。年齢が上がるほど、内側のひだが短い傾向があった。体格(BMI)とも関係していた。著者たちは、ひとつの決まった数字で「正常かどうか」を決めるのは適切でない、と書いている(Kreklau ら, 2018)。
ACOGも、次の違いはどれも正常だとしている。外側のひだの幅は約0.6〜5cmまでいろいろ。内側のひだが外側より長いことも多いけれど、そうでなくても正常。左右の大きさが違ってもいい。大人の肌の色は、うすいピンクから、こい赤茶色や黒っぽい色まで幅がある。
ロンドンの研究は50人と少なく、麻酔中の姿勢で測ったものなんだ。スイスの研究は、ひとつの病院の白人女性だけを対象にしている。だから「日本の人の平均」をそのまま示すものではないよ。それでも、どちらの研究も「形の幅はとても広い」という点では一致しているんだ。
「正常」の幅を知る意味
雑誌や動画で目にする形は、ほんの一部にすぎない。それと比べて「わたしは変かも」と思ってしまうのは、自然なことなんだ。でも研究が示しているのは、大きさも色も左右の差も、もともと幅が広いということ。ロンドンの研究の著者たちも、性器の手術を考える女性には、この幅の情報を伝えるべきだと書いている。
ただし、ACOGはこうも書いている。まれに、内側のひだの大きさや左右差のせいで、服がこすれる、運動や性行為やタンポンの出し入れの時につらい、ということがある。そんな困りごとがあるなら、見た目の話としてではなく、体の不便として婦人科で相談していいんだ。
花の形が一輪ずつ違うように、あなたの形もあなただけのものなんだ。比べる相手は、ほかの誰かではなく、先月のあなただよ。
変化に気づいたら
イギリスの国民保健サービス(NHS)は、外陰部のがんの症状として次のものを挙げている。先ほどのニューカッスル病院群の案内も書いているように、外陰部のがんは、とてもまれな病気だ。そしてこれらの症状は、ほかのいろいろな原因でも起こる、ありふれたものでもある。それでも、早く見つけるほど治療がうまくいきやすいので、診てもらうことが大切だとしているよ。
- しこり、できもの(いぼのように見えることもある)、ただれ
- 生理と関係のない出血や、血のまじったおりもの
- よくならないかゆみ
- 赤い・白い・こい色のまだら、皮ふが厚くなったり盛り上がったりしたところ
- 形や色が変わってきたほくろ
- おしっこの時の焼けるような痛み
こうした変化に気づいたら、婦人科へ。受診の目安や伝え方は第6章に、おりもののサインは第9章にまとめてあるよ。
自分の形を知ることは、自分を好きになるための第一歩でもあるんだ。見慣れてくると、不安はだんだん小さくなっていくよ。これで入門はおしまい。次は修行の道へ進もう。
修行のお題 今週どこかで1回、明るい場所で手鏡を使い、上から順に見てみよう。見終わったら「色」「左右の違い」「気になったところ」を、スマホのメモに1行ずつ書いておく。来月、同じ順番でもう一度見比べてみてね。
参考にした資料
- Lloyd J, Crouch NS, Minto CL, Liao LM, Creighton SM (2005). Female genital appearance: 'normality' unfolds. BJOG
- Kreklau A, Vaz I, Oehme F, ほか (2018). Measurements of a 'normal vulva' in women aged 15–84: a cross-sectional prospective single-centre study. BJOG
- Vulvovaginal Health(American College of Obstetricians and Gynecologists)
- Self-examination of the vulva(Newcastle Hospitals NHS Foundation Trust)
- Symptoms of vulval cancer(NHS)