眠れない夜と一人時間 ― 睡眠・ストレスとの関係を研究で確かめる
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「終わったあとは、すっと眠れる」。そう感じている方は少なくないと思います。反対に、「眠れないから、つい手が伸びる」「スマホで動画を見ているうちに夜ふかしになる」という悩みもよく聞きます。このコラムでは、オナニー(マスターベーション)と眠り・ストレスの関係について、研究で分かっていることと、まだ確かめられていないことを分けてまとめます。最後に、眠りをじゃましない一人時間の作法を紹介します。
「終わると眠くなる」は本当? 本人の感じ方の調査
オーストラリアの研究チームは、大人778人(女性442人・男性336人、平均34.5歳)にインターネットで匿名の調査をしました(Lastella ら, 2019)。寝る前にオーガズムをともなうマスターベーションをした時、「眠りの質がよくなる」と答えた人は54.1%、「寝つきがよくなる」は47.4%でした。「悪くなる」と答えた人は、それぞれ1.9%と4.6%にとどまり、男女の差は見られませんでした。
パートナーとの性行為でオーガズムがあった時は、「眠りの質がよくなる」が70.8%と、さらに多くなっています。ただし、これはどれも本人がそう感じているかを聞いた調査です。実際の眠りを測ったものではありません。
実際の眠りを測った研究
本人の感じ方ではなく、記録や機械で眠りを確かめた研究もあります。
- 14日間の日記の研究:若い大人を中心とした159人が、毎晩の性の活動と眠りを日記につけました。分析すると、寝つきや眠りの質との関係がはっきり見られたのは「パートナーとの性行為でオーガズムがあった夜」だけでした。マスターベーションの夜は、オーガズムがあってもなくても、眠りとの関係は見られませんでした(Oesterling ら, 2023)
- 眠りの深さを測った小さな研究:同居している14人に、頭につける睡眠計を11晩つけてもらった試験的な研究では、性の活動がなかった夜に比べ、マスターベーションの夜は夜中に目が覚めている時間が短くなりました(平均22.9分→16.2分)。一方で、寝つくまでの時間や眠った長さ、本人の「よく眠れた」という感じ方には差がありませんでした(Sleep Health, 2025)
まとめると、「眠りを助けることがある」という手がかりはあるものの、人数の少ない研究が多く、「オナニーをすればよく眠れる」とまでは確かめられていません。眠るための手段のひとつとして試すのはかまいませんが、効き目を期待しすぎないのがよさそうです。
なぜ眠くなるのか:考えられているしくみ
オーガズムのあとには、オキシトシンやプロラクチンというホルモンが増えることが知られています。研究者は、これらのホルモンや、ストレスに関わるコルチゾールの変化が、くつろいだ気分や眠気につながるのではないかと考えています(Lastella ら, 2019)。ただし、これは考えられている説で、眠りへの効き目をホルモンで確かめたわけではありません。
ストレスと夜ふかしの、よくある悪循環
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、日中にストレスを発散できないと、寝る前や寝床の中で、スマホを使うなどの「ストレス解消の行動」が出やすくなり、夜ふかしや睡眠不足につながると説明しています。寝そべってスマホを見ると、画面との距離が近く光を浴びやすいため、寝つきや眠りの質が悪くなるとも書かれています。
一人時間そのものが悪いわけではありません。けれど、動画を探しているうちに1時間たっていた、という流れは、まさにこの悪循環です。眠りのためには、「何をするか」より「寝床でスマホを長く見ないこと」のほうが大切かもしれません。
眠りをじゃましない一人時間の作法
- 寝床に入る前に済ませる:するなら、寝床に入る前の時間に。終わったら画面を閉じて、明かりを落としてから布団に入る
- スマホは寝床の外へ:睡眠ガイドは、デジタル機器は寝室に持ち込まず、電源を切って別の部屋に置くことをすすめています。むずかしければ、手の届かない場所に置くだけでも
- 片づけは手早く:後始末に手間取ると目がさえます。道具は手元にそろえておく(後始末の作法)
- 「眠るためにしなきゃ」と義務にしない:気が乗らない夜は、しなくてかまいません
- 眠る時間を確保する:成人は、6時間以上を目安に必要な睡眠時間をとることがすすめられています(睡眠ガイド2023)
眠れない日が続くときは
寝つけない、夜中に何度も目が覚める、朝起きても休まった感じがしない、日中の眠気が強い。こうした状態が続く時は、ストレスだけでなく、睡眠の病気が隠れていることもあります。ひとりで抱えず、かかりつけの医師や、睡眠外来・心療内科などに相談してください。気分の落ち込みが続く時も同じです。
ここで紹介した研究は、多くが本人の答えにもとづくもの、または人数の少ないものです。オナニーで眠りがよくなる、ストレスが消える、とは約束できません。眠れない状態が2週間以上続く時や、日中の生活に困っている時は、医療機関に相談しましょう。
修行のお題 今夜は、一人時間を寝床に入る前に済ませ、終わったらスマホを寝床の外に置いてから目を閉じてみましょう。翌朝、「休まった感じ」を3段階で記録アプリ「修行帳」にメモ。1週間続けると、自分に合う夜の過ごし方が見えてきます。
参考にした資料
- Lastella M ら(2019)Sex and Sleep: Perceptions of Sex as a Sleep Promoting Behavior in the General Adult Population. Frontiers in Public Health 7:33
- Oesterling ら(2023)The influence of sexual activity on sleep: A diary study(PubMed)
- Sleep on it: A pilot study exploring the impact of sexual activity on sleep outcomes in cohabiting couples. Sleep Health(2025)
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- 厚生労働省「睡眠対策」