第7章 実践編 ― 触れ方を順番に身につけよう
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ここまでで、体の地図と準備、練習の考え方がそろったね。この章では「実際にどこに、どう触れて、どう進めるか」を順番に話そう。書いてあるのは、あくまで目安のひとつなんだ。どの段階でも、痛みや強い違和感があれば、そこで止めていいよ。
始める前の流れ:外から内へ
いきなりクリトリスの先端に触れると、強すぎたり、何も感じなかったりしやすい。遠いところから近づいていくのが基本なんだ。
- 第2章の準備(手洗い、短く丸めた爪、通知オフ)をすませ、仰向けで膝を立てるか、横向きになる
- 手のひら全体で、太ももの内側と下腹をゆっくりなでる。1〜2分ほど
- ふっくらした丘(恥丘)に手のひらを乗せ、軽く押して小さく揺らす
- 外側のひだ(大陰唇)を、指の腹で上から下へなでる
- 性器に直接触れる前に、潤滑剤を指先に1〜2滴取る。乾いた指で粘膜をこすらないためだ。途中で乾いてきたら、そのつど足す
外側の触れ方:場所・指・向き・強さ
第3章の「圧・リズム・範囲」を、具体的な動きに落としこむとこうなる。強さは3段階で考えよう。「軽い」は皮膚の表面をすべる程度、「中くらい」は皮膚ごと少し動く程度、「しっかり」は指が少し沈む程度だ。どの触れ方も「軽い」と、1秒に1回くらいのゆっくりした速さから始める。1つの触れ方は、少なくとも1〜2分は続けてから良し悪しを決めよう。数秒で切り替えると、体が反応する前に終わってしまうんだ。
- フードの上から円を描く:場所は、先端をおおう皮膚のフード(包皮)の上。指は、人さし指か中指の腹を1本。向きは時計回りでも反対でもよく、10円玉くらいの小さな円を描く。強さは「軽い」から「中くらい」へ。速さは1秒に1周から始め、心地よければ1秒に2周くらいまで上げる。まず2〜3分続けてみる。合わない時は、円を大きくして先端から離すか、逆回りにする。円のうち一部分だけが心地よいなら、その部分だけを弧のように往復させる
- 上下になでる:場所は、フードの上か、そのすぐ横。指は中指の腹、または中指と薬指の2本をそろえる。向きは、ひだの流れに沿って上下に1〜2cmほど往復する。強さは「軽い」から「中くらい」。速さは1秒に1往復から始め、慣れたら少しずつ速くする。2〜3分続ける。強すぎる時は幅を広げて圧を弱め、ぼんやりする時は幅を短くして圧を少しだけ強める
- 左右に揺らす:場所は、フードの上、または先端のすぐ上の皮膚。指は人さし指か中指の腹。向きは左右に5mmほど、小さく揺らす。強さは「軽い」、速さは1秒に2〜3回。先端の横をかすめるように動かす人もいる。1〜2分続ける。ひりひりしたら、潤滑剤を足して幅を小さくする
- 軽くたたく:場所は、フードの上か、恥丘の下のほう。指は人さし指から薬指の3本の腹をそろえるか、中指1本。向きは真上から、とんとんと軽く当てては離す。強さは「軽い」だけにする。速さは1秒に2〜3回。1分ほど試し、響きすぎる時は、たたく場所を恥丘の側へ上げる
- 手のひらで押して揺らす:場所は、恥丘からフード、外側のひだまでの広い範囲。指ではなく、手のひら全体か、手のひらのつけ根(手首に近いふくらみ)を使う。向きは、押したまま前後か左右に1cmほど揺らす。強さは「中くらい」から「しっかり」でもよい。速さは1秒に1〜2回。3分ほど続けられる。刺激が広く散るので、直接が強すぎる人に向く。物足りない時は、押す場所を少しずつ先端のほうへずらす
- 2本の指ではさむ:場所は、クリトリスの両わき。指は人さし指と中指をV字に開き、内側のひだ(小陰唇)ごと軽くはさむ。向きは、はさんだまま上下に1〜2cmすべらせる。強さは「軽い」から「中くらい」。速さは1秒に1往復。2分ほど続ける。はさむ力が強いと痛みやすいので、指の間は先端に直接触れないくらいに開けておく
先端に直接触れるのが心地よい人もいれば、痛いと感じる人もいる。直接触れるなら、潤滑剤をつけた指の腹で、ほんの短く触れてはフードの上に戻る、をくり返すところから始めよう。痛い、ひりひりする、何も感じなくなってきた、というときは、強さを1段下げるか、場所をフードの上や横へ戻す。それでも変わらなければ、1分ほど手を離して、太ももの内側などに戻ってから始め直そう。
第1章で紹介した、18〜94歳のアメリカの女性1,055人の調査には、触れ方の好みも細かく載っている(Herbenick ら, 2018)。
- 好きな動きの形は、上下が63.7%、円が51.6%、左右が30.6%だった
- 多くの人は軽いか中くらいの圧を好み、しっかりした圧を好んだのは10.7%だった
- 約3分の2は先端への直接の刺激を好んだ。先端のまわりや、ひだへの刺激を好む人も多かった
- 間接的な刺激を好む人のうち、69.1%は「フードの上の皮膚ごし」、28.8%は「ひだを両側から寄せてはさむように」触れる方法を挙げた。右側からが20.2%、左側からが19.2%だった
- パートナーとの触れ合いについての質問では、リズムのある動き、先端のまわりを回る動き、動きを切り替えること、強さに強弱をつけることを、それぞれ75%を超える人が好んだ
内側の触れ方
続く調査では、3,017人(18〜93歳)に、腟への挿入を心地よくする工夫をたずねている(Hensel ら, 2021)。研究者は4つの型に名前をつけた。
- アングリング(角度):腰を回したり上げ下げしたりして、中でこすれる場所を変える。87.5%
- ロッキング(揺らし):出し入れせず、奥に入れたまま、道具などの根もとがクリトリスに当たり続けるように揺らす。76.4%
- シャローイング(浅く):入り口のすぐ内側だけに触れる。83.8%で、指先で行った人は60.4%
- ペアリング(組み合わせ):挿入と同時にクリトリスにも触れる。69.7%。自分の指や道具で行った人は40%
ここまでの2つの調査は、どちらも「そう答えた人の割合」で、パートナーとの時の答えも含んでいる。誰にでも合う方法を示したものではないよ。また、どちらも女性の心地よさを伝えるサイト(OMGYES)の協力や資金で行われているんだ。
これをふまえた、指での進め方の例だよ。外側で十分に高まり、潤いが増えてからにしよう。
- 爪を短く丸め、指に潤滑剤をたっぷりつける
- 指1本(中指か人さし指)の腹を上に向け、入り口のすぐ内側に置く。ここで止めて、しばらく慣らす(「浅く」)
- 痛みがなければ、第2関節くらいまでゆっくり入れる
- おなか側の壁に指の腹を当て、「こっちへおいで」と手招きするように指先を曲げて伸ばす。強さは、壁を軽く押す程度。1秒に1回くらいから始め、2〜3分続ける
- 押す場所を、入り口寄りと奥寄りで指1本分ずつずらして比べる。出し入れするより、指を入れたまま押す位置を変えるほうが、こすれにくい
- もう片方の手で、フードの上から外側にも触れる(「組み合わせ」)。内側だけでは何も感じない人も、外側と一緒だと変わることがある
- おしっこに行きたいような感覚が出ることがある。気になるなら、始める前にトイレをすませておく
内側は、何も感じない、違和感だけがある、という人も少なくない。その時は無理に続けず、外側に戻ればいい。入れるときに痛む、奥が痛む、というときは中止しよう。
おなか側の壁の一部を、いわゆる「Gスポット」と呼ぶことがある。けれど、31件の研究を見直した研究(系統的レビュー)では、研究ごとに結果が食い違っていた。あるとした研究のあいだでも、場所や大きさ、正体について一致がなく、存在は証明されていないと結論づけている(Vieira-Baptista ら, 2021)。それより前の総説も、画像の研究ではクリトリス以外に独立した構造を示せていない、としていた(Kilchevsky ら, 2012)。見つからなくても、あなたの体がおかしいわけではないんだ。
道具を使う時の手順
道具の種類と選び方は第5章で話したので、ここでは当て方に絞ろう。
- いちばん弱い設定でスイッチを入れ、まず太ももの内側に当てて強さを確かめる
- 最初は下着やハンカチを1枚はさむか、自分の手の甲ごしに当てる。振動がやわらぎ、広く伝わる
- 恥丘、外側のひだと進み、クリトリスの横やフードの上に当てる。先端に真正面から当てるより、道具の平らな面を斜めに寝かせて当てるほうが強すぎにくい
- 当てる強さは、道具の重さを乗せる程度で十分。手で押しつけると振動が強く響きやすい
- 一点に当て続けず、数十秒ごとに少し場所をずらしたり、離したりする。1回に当てる時間は、はじめは合計5分ほどまでを目安にする
- 強さの段階を上げるのは、同じ場所で1〜2分続けても物足りない時だけ。上げるのは1段ずつにする
- 電マ型のように大きいものは、先端の丸い面を恥丘に当て、そこから下へ少しずつずらす。性器に直接より、下着やタオル越しを基本にする
- 強い設定で長く当て続けない。しびれやひりひり感が出たら、そこで休む
布をはさむ、斜めに当てる、といった工夫は研究で確かめられたものではなく、刺激をやわらげるための経験的な工夫だよ。
経験者のあいだでよく語られる工夫
ここからは研究ではなく、体験を書いた記事やガイドで、いくつもの書き手が共通して挙げていた工夫だ。合うかどうかは試して確かめてね。
- 布の枚数を減らしていく:服の上、下着の上、直接、と間にあるものを1枚ずつ減らす。いきなり直接より、なじみやすいという声が多い
- 手を止めて、腰のほうを動かす:手のひらを当てたまま動かさず、骨盤を小さく揺らしたり傾けたりする。手首が疲れにくく、リズムを体にまかせられる
- 脚の形を変える:膝を開く、閉じる、脚をまっすぐ伸ばす。脚を閉じるだけで、手に力を入れずに圧が増すことがある
- 左右を比べる:フードの右側と左側で同じ動きをして比べる。片側のほうが心地よい人は少なくない
- 指1本分ずつずらす:強さを上げても反応が薄いときは、場所を少しだけずらしてみる。強さより位置の問題のことがある
- 止めて、戻る:高まってきたら少し止めたり、弱い触れ方に戻ったりしてから再開する。調査でも、こうしたやり方を心地よいと答えた人がいた(Herbenick ら, 2018)
体験談の中には、体に入れるために作られていない物を入れる、強い振動を長時間当て続ける、シャワーの水を中に強く当てる、といった方法も見かける。傷や炎症、感染のもとになりうるので、この道では避けよう。
1回分の流れの例(15〜20分)
- 0〜3分:呼吸を整え、太もも・下腹・恥丘を手のひらでなでる
- 3〜6分:下着の上から手のひらで押して揺らす。潤滑剤をつけ、外側のひだ、次にフードのまわりを軽くなでる
- 6〜12分:フードの上で、円・上下・左右のうち1つを選んで続ける。合えば続け、合わなければ1つだけ変える
- 12〜18分:高まってきたら同じ動きを保つ。好みで内側や道具を足す
- 最後の数分:届いても届かなくても、手を止めてゆっくり呼吸する
途中で高まりが下がったら、少し前の段階に戻ってかまわない。時間はあくまで目安だよ。
型は、覚えたら自分の体に合わせて崩していいものなんだ。今日の体に聞きながら、順番を入れ替えてごらん。
終わったあとと、よくある失敗
- ぬるま湯で湿らせたティッシュや柔らかい布で、前から後ろへやさしく拭く
- 手を洗い、道具は第2章のやり方で洗ってよく乾かす
- トイレに行っておく。念のための習慣としてよく勧められるけれど、ひとりの時の効果を調べた研究は見つからなかった
- 水を飲んで、数分横になってひと休みする
よくある失敗と直し方も短くまとめておくね。
- 最初から強くこする → 圧を半分にし、フードの上からに戻す
- 途中で乾いてひりひりする → 手を止めて潤滑剤を足す
- 高まってきたところで動きを変える → 「いい」と感じたら、そのまま続ける(第3章)
- 道具を強い設定で当て続ける → 弱い設定に戻し、布を1枚はさむ
- 届くことばかり考えて力む → 長く息を吐き、目標を「心地よさを1つ見つける」に戻す(第4章)
触れたあとの痛み、出血、かゆみ、ひりひり感が何日も続くときは、がまんせずに婦人科で相談しよう。受診の目安は第6章にまとめてあるよ。
修行のお題 外側の触れ方6つのうち、まだ試していないものを2つ選ぼう。それぞれ軽い圧で2分ずつ試して、「心地よい・ふつう・合わない」の3段階でメモしてね。
参考にした資料
- Herbenick D, Fu TJ, Arter J, Sanders SA, Dodge B (2018). Women's Experiences With Genital Touching, Sexual Pleasure, and Orgasm: Results From a U.S. Probability Sample of Women Ages 18 to 94. Journal of Sex & Marital Therapy
- Hensel DJ, von Hippel CD, Lapage CC, Perkins RH (2021). Women's techniques for making vaginal penetration more pleasurable: Results from a nationally representative study of adult women in the United States. PLOS ONE
- Vieira-Baptista P, Lima-Silva J, Preti M, Xavier J, Vendeira P, Stockdale CK (2021). G-spot: Fact or Fiction?: A Systematic Review. Sexual Medicine
- Kilchevsky A, Vardi Y, Lowenstein L, Gruenwald I (2012). Is the female G-spot truly a distinct anatomic entity? Journal of Sexual Medicine