性欲には波がある ― 週・月・季節・年齢で変わるもの
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「最近、まったくその気にならない」「この時期だけ、やけに気持ちが高ぶる」。性欲の強さは、毎日同じではありません。波があるのは自然なことですが、波を知らないと「自分はおかしいのでは」と不安になりがちです。このコラムでは、研究で分かっている性欲の波を、週・月・季節・年齢の順に見ていきます。そのうえで、波を下げる原因と、波との付き合い方、相談の目安をまとめます。
まず知っておきたいこと:「ふつう」の幅は広い
性欲の強さには、もともと大きな個人差があります。多い・少ないに「正しい量」はありません。困るのは量そのものより、急に変わって気になる時や、自分やパートナーが悩んでいる時です。その時に役立つのが、自分の波を知っておくことです。
週と月の波:女性の周期と、週末
アメリカの研究チームは、ピルなどを使っていない若い女性に、1〜2回の月経周期のあいだ毎日だ液をとってもらい、ホルモンと、その日の性欲を記録しました(Roney & Simmons, 2013)。
- 排卵のころに性欲の山があり、排卵のあと(月経前の時期)には下がっていた
- 2日前のエストロゲン(エストラジオール)が高いほど性欲が高く、プロゲステロンが高いほど低かった
- ホルモンとは別に、金曜・土曜は性欲が高めだった
大学に通う年代の若い大人を対象にした研究なので、年齢の高い人やピルを使っている人にそのまま当てはまるとは限りません。それでも、「月の中で波がある」「週末は高まりやすい」と知っておくだけで、気持ちが楽になる方は多いはずです。
季節の波:カレンダーと気分
「春は恋の季節」と言われますが、研究の答えは少し違います。10年分のグーグル検索を調べた研究では、「sex」という言葉の検索は、キリスト教の国ではクリスマスの週に、イスラム教の国ではラマダン明けの祭り(イード・アル=フィトル)の週に、いちばん大きな山がありました(Wood ら, 2017)。
山は北半球・南半球の季節に関係なく、家族で過ごす大きな祝日にそろって現れていました。研究者は、季節よりも文化と「みんなの気分」(幸せで穏やかな気分)が関わっているのではないかと考えています。日本を個別に調べたものではありませんが、長い休みや気分が明るい時期に高まりやすい、と考えると分かりやすいでしょう。
年齢の波:減るのではなく、形が変わる
アメリカの14〜94歳の約5,900人の全国調査では、マスターベーションは生涯を通して珍しくないもので、70歳以上では、パートナーとの行為より多く行われていました(Herbenick ら, 2010)。年齢とともにホルモンは少しずつ減り、とくに女性は閉経のころに変化を感じやすくなります(NHS)。
年を重ねると、性欲は「なくなる」というより、高まるまでに時間がかかる、きっかけが変わるなど、形が変わっていくことが多いのです。年代ごとのくわしい話は、年代別ガイドにまとめています。
波を下げるもの:疲れ・ストレス・薬・関係
イギリスの国民保健サービス(NHS)は、性欲が下がる主な原因として次のものを挙げています。
- ストレス、不安、気分の落ち込み
- お酒の飲みすぎ
- 一部の薬(血圧の薬、抗うつ薬など)や、ホルモンを使う避妊法(ピルなど)
- 妊娠・出産のあとの、ホルモンの変化や子育ての疲れ
- 年齢によるホルモンの減少、とくに更年期
- 勃起の悩みや腟の乾燥などの、性の悩み
- パートナーとの関係の悩み
- 心臓病、糖尿病、甲状腺の働きの低下などの病気
性欲が下がった時、自分の気持ちの問題だと思いこみがちですが、体や環境の側に理由があることも多いのです。
波との付き合い方
- 低い時期を責めない:疲れている週、気持ちが沈んでいる時期は、休む時期と考える
- 高い時期も心配しすぎない:高まる時期があるのも自然なこと。生活が回っていれば問題はありません
- 記録して、自分の周期を知る:1〜2か月つけると、週末・月の周期・忙しい時期との重なりが見えてきます
- パートナーとは「波がある」ことを共有する:気分が合わない日があっても、相手を拒んでいるわけではない、と伝えやすくなります
相談の目安
次のような時は、ひとりで悩まずに相談してください。
- 飲んでいる薬や避妊法を変えてから下がったと感じる(薬は自分の判断でやめず、処方した医師に相談)
- 出産のあと、なかなか戻らない
- 気分の落ち込みや眠れない状態が続いている
- 急に変わって、理由が思い当たらず心配
相談先は、女性は婦人科(更年期外来)、男性は泌尿器科、気分の落ち込みは心療内科・精神科がめやすです。
ここで紹介した研究は、主に海外のもので、対象者の年齢や国が限られています。性欲の波には個人差が大きく、ここに書いた形に当てはまらなくても異常ではありません。強い不安や落ち込みが続く時は、医療機関や、各都道府県の精神保健福祉センターに相談しましょう。
修行のお題 これから1か月、毎晩「今日の性欲」を5段階で、記録アプリ「修行帳」につけてみましょう。忙しさや眠りの具合も一言そえると、自分の波と、その理由が見えてきます。
参考にした資料
- Roney JR, Simmons ZL(2013)Hormonal predictors of sexual motivation in natural menstrual cycles. Hormones and Behavior 63(4)
- Wood IB ら(2017)Human Sexual Cycles are Driven by Culture and Match Collective Moods. Scientific Reports 7
- Herbenick D ら(2010)Sexual Behavior in the United States: Results from a National Probability Sample of Men and Women Ages 14–94. Journal of Sexual Medicine 7(Suppl 5)
- NHS: Low sex drive (loss of libido)