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70代からの性の健康

⏱ 読む時間の目安:約6分

70代は、体力や関節の具合に合わせて、暮らし全体の「ちょうどよさ」を探す年代です。性についても同じです。以前と同じやり方にこだわらず、今の体に合った形を見つけることが大切です。パートナーと続けていく人、パートナーを見送った人、新しい出会いがある人、ひとりの時間を大事にする人。どの形も、その人の人生の一部です。

この年代のからだの変化

米国のふたつの全国調査を分析した研究があります。75〜85歳で過去1年に性の活動があったのは、男性の38.9%、女性の16.8%でした。性に関心があるのは、男性の41.2%、女性の11.4%でした。健康状態が「とてもよい」人ほど、性の活動が多くみられました。男女の差は、パートナーがいる人だけで比べると小さくなりました(Lindau ら, 2010)。ある時点の米国のデータで、関心や活動の有無は本人の答え(自己申告)によるものです。それでも、「年齢」より「健康」と「パートナーの有無」が大きく関わることがわかります。

75〜85歳の性の活動と関心男性女性過去1年に性の活動があった38.9%男性16.8%女性性に関心がある41.2%男性11.4%女性
出典:Lindau ら(2010)。アメリカのふたつの全国調査の75〜85歳。本人が答えたデータです。パートナーがいる人だけで比べると、男女の差は小さくなりました。

ひとりの時間(オナニー)

ひとりの時間は、自分の体調とペースだけで決められる楽しみ方です。体への負担も、わりあい少なめです。パートナーがいない時期にも、自分の体とのつながりを保つ手段になります。手の力や関節の動きに合わせて工夫すると、ぐっと楽になります。

ふたりの時間

オランダの65歳以上、約2,400人の調査があります。パートナーのいる人の8割以上が、過去半年にキスやなでるといったふれあいをしていました。性の活動は、男性の約5割、女性の約4割でした。一方、パートナーのいない女性では、どちらもごくわずかでした(Freak-Poli ら, 2017)。ある時点の調査で、もの忘れなどが進む病気(認知症)の人は対象に入っていません。それでも、この年代でもふれあいが生活の一部であることがわかります。

股関節を人工の関節に取りかえる手術について、研究をまとめたものがあります。患者の76%が、性の悩みの主な原因を、股関節がすり減って痛む病気(関節症)だと答えました。多かったのは、痛みとこわばりです。手術後は、44%が満足度が上がったと答えました。再開は平均で手術後4か月ごろでしたが、医師の86%は、この話題をほとんど話していませんでした(Issa ら, 2017)。研究は10件と少なく、質もまちまちです。それでも、手術を受けた人は、再開の時期や避けたい姿勢を、担当医やリハビリの担当者に聞いてよいのです。

パートナーを亡くしたあと:ふれあいを失う寂しさも、悲しみの一部です。無理に気持ちを切りかえる必要はありません。日本の中高年の、独り身の人(単身者)の調査では、回答者の3割以上が死別を経験していました。交際相手がいる独り身の人は、性についてのやりとりが豊かだったと報告されています(荒木, 2020)。新しい出会いを持つのも、持たないのも自由です。性のあり方がさまざまな人たち(LGBTQ+)のうち、65〜83歳の人への聞き取りもあります。体の変化で関係に求めるものが変わったこと、ひとりの家に帰る寂しさが語られました(Hurd ら, 2025)。30人への聞き取り研究ですが、どんな性のあり方でも、この年代の出会いと孤独は大切な話題です。

新しい相手とは、性の行為でうつる病気(性感染症)の予防が欠かせません。世界の見積もり(推計)では、2019年に60〜89歳で、エイズの原因になるウイルス(HIV)以外の性感染症が約2,600万件新たに起きたとされています。また、日本を含む、所得の高いアジア太平洋地域では、高齢者のHIVの新たな感染率が上がっていました(Fu ら, 2024)。国ごとにデータの質に差がある見積もりの数字ですが、コンドームの使用と検査は何歳でも大切です。保健所では、無料で、名前を明かさずに(匿名で)検査を受けられる所があります(厚生労働省)。

病気や薬との付き合い方

関節の痛みや、骨がもろくなる病気(骨粗しょう症)がある人は、体重のかかる姿勢や、腰や背中を強くひねる動きを避けると安心です。心臓や肺の病気がある人は、再開の前に主治医に、どのくらいの動きなら大丈夫かを確かめておきましょう。薬が増える年代です。血圧の薬、うつ病などに使う薬(抗うつ薬)、ぼうこうの下にある男性の器官(前立腺)の薬などが、性の働きに影響していないか、かかりつけの医師や薬剤師にまとめて相談すると安心です。

勃起の悩み(ED)の治療薬は、医師の処方が必要です。胸がしめつけられるような心臓の病気(狭心症)などに使う硝酸薬とは、一緒に使えません。持病や飲んでいる薬によっては、使えないこともあります。腟に使うエストロゲンの薬(腟のエストロゲン製剤)なども医師の処方が必要で、持病によっては使えないことがあります。胸の痛み、強い息切れ、めまい、関節の強い痛みが出たら、すぐに止めて受診してください。

相談先は、かかりつけ医、泌尿器科、婦人科、関節のことは整形外科です。

この年代へのひとこと

70代の性は「どれだけするか」より「どう心地よく過ごすか」です。クッション一つ、姿勢一つの工夫で、ふれあいはまだまだ広がります。

この年代のお題体のどこが楽で、どこがつらいかを書き出し、楽な姿勢を一つ見つけてみましょう。

参考にした資料

📜 オナニー道の心得📓 記録アプリ「修行帳」