40代からのオナニー道(女性編)
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40代から50代にかけて、多くの女性が更年期をむかえます。からだが変わる時期ですが、それは一人時間の終わりを意味しません。自分のからだを知っている今だからこそ、深められる楽しみ方があります。このページでは、研究で分かっていることと、まだ分かっていないことを分けながら、これからの道を案内します。
よく来たね。からだが変わるのは、道が次の段に進んだということなんだ。前と同じやり方にこだわらず、今のあなたに合うやり方を一緒に探してみよう。
年齢とともに変わること
閉経の前後の数年間を、更年期といいます。この時期に、卵巣から出る女性ホルモン(エストロゲン)が大きく減ります。閉経のあとは、女性ホルモンがほとんど出なくなります。そのため、腟や、その入り口のまわり(外陰部)の、表面をおおうやわらかい膜(粘膜)が、薄く弱くなっていきます(日本産婦人科医会)。
こうした変化で、腟の乾燥、ひりひりする感じ、性交のときの痛み、尿が近いといった症状が起きます。これらをまとめて、閉経にともなう腟や尿の症状(閉経関連泌尿生殖器症候群、GSM)と呼びます。北米閉経学会の2020年の見解では、閉経後の女性の約27〜84%にGSMがあるとされています。そして、見過ごされやすく、治療されないままのことが多いと指摘されています(Faubion ら, 2020)。
Faubion ら(2020)で分かること:GSMはとてもよくある状態で、対処の方法があること。限界:これは研究をまとめた専門家の意見です。割合の幅が広いのは、もとになった調査ごとに、対象や、どこからをGSMとするかの決め方が違うためです。
感じ方も変わります。うるおうまでに時間がかかる、刺激への感じ方が変わる、オーガズムまでが遠くなる、と感じる人もいます。アメリカの50代後半から80代の男女3,005人を調べた研究があります。性的な活動をしている女性の39%がうるおいの悩みを、34%がオーガズムに達しにくい悩みを挙げていました。一方で、この1年にオナニーをした女性は、50代後半から60代前半で約32%、70代後半から80代でも約16%いました(Lindau ら, 2007)。年齢を重ねても、一人時間は続いているということです。
年齢を重ねても楽しめる、と示す研究
アメリカの20代後半から80代の女性2,116人を調べた研究があります。性的な活動をしている女性の満足度は、年齢とは関係が見られませんでした。満足度と結びついていたのは、パートナーとの関係への満足や、性を大切に思う気持ちでした(Thomas ら, 2015)。
Thomas ら(2015)で分かること:年齢が上がっても、性の満足度が下がるとは限らないこと。限界:ある時点で1回調べた研究で、パートナーとの性についての調査です。一人時間の満足度そのものを調べたわけではありません。
年を重ねると、自分のからだのことがよく分かるようになる。何が心地よく、何が苦手か。その知識こそが、あなたの道を深める一番の味方なんだ。
楽しみ方を深める工夫
- ローションと保湿剤を使い分ける:ローション(潤滑剤)は、その時のこすれを減らすものです。腟用の保湿剤は、ふだんからうるおいを補うものです。女性2,453人が日記をつけた研究があります。ローションを使ったときのほうが、一人のときもパートナーとのときも、気持ちよさや満足度が高く、体の不調はまれでした。水が主成分のものは、シリコーンが主成分のものより、体の不調の報告が少なめでした(Herbenick ら, 2011)。ただ、本人の報告による研究です。試した製品以外にも当てはまるかは分かっていません。
- 時間をかける:うるおいや興奮に時間がかかるのは、自然な変化です。からだ全体に触れるところから始め、急がないことが大切です。
- 道具は弱い刺激から選ぶ:振動の強さを細かく変えられるもの、肌にやさしい素材(医療用シリコーンなど)のものを選びましょう。そして、いちばん弱い設定から試しましょう。強い刺激を長く当てると、ひりひりしたり感じにくくなったりすることがあります。シリコーン製の道具には、水が主成分のローションを合わせるのが基本です。
- おしりの下の筋肉(骨盤底筋)をきたえる:腟や尿道のまわりにある、ハンモックのように内臓を支える筋肉を、数秒しめてゆるめる運動です。くらべる形で行った21の試験を調べた、まとめの研究があります。この筋肉のトレーニングで、性の働きを点数にした質問票の「オーガズム」「満足」などの点数が上がっていました(Jorge ら, 2024)。ただし、証拠の確かさは「とても低い」と評価されています。研究ごとのやり方もばらばらです。尿もれ対策にもなる、無理のない習慣として続けてみましょう。
定期的な性的な活動と、腟の健康
閉経後の女性52人を調べた古い研究があります。月に3回以上性交をしている女性は、年に10回未満の女性に比べて、腟が薄く弱くなる変化(萎縮)が少なかったと報告されています(Leiblum ら, 1983)。「使うことで血の流れが保たれる」という考え方の根拠として、よく紹介される研究です。
Leiblum ら(1983)で分かること:性的な活動が多い人ほど、腟の萎縮が少ないという「関係」があったこと。限界:人数が少なく、1回だけ調べた研究です。活動が多いから萎縮が少ないのか、萎縮が少ないから活動できているのか、どちらが先かは分かりません。オナニーだけで同じことが言えるかも、確かめられていません。
つまり、「続けていれば腟の健康が保てる」とまでは言えないのが、今の研究の段階です。痛みを我慢して続ける必要はありません。心地よい範囲で楽しみ、つらい症状があれば医療の力を借りるのが、いちばん確かな道です。
受診の目安と、婦人科で相談できること
- 閉経後の出血:量が少なくても、必ず婦人科(産婦人科)を受診する。多くは、腟が薄くなって起きる炎症(萎縮性腟炎)によるものです。ただ、子宮体がんなどの病気が隠れていることもあります(日本産婦人科医会)。
- 閉経前でも、生理以外の出血が続くときは受診する。
- 痛み:触れたときや道具を使うときの痛み、ひりひり感が、ローションを使っても続くときは相談する。
- かゆみ、においの強いおりもの、できものがあるときは受診する。
- 尿の悩み(近い、もれる、くり返す膀胱炎)は、婦人科か泌尿器科に相談する。
婦人科や更年期外来では、いろいろな相談ができます。GSMの診察、腟の状態に合った保湿剤やローションの相談、減った女性ホルモンを補う治療(ホルモン補充療法、HRT)や、腟に直接使う女性ホルモンの薬などです。北米閉経学会は、軽い症状には、処方のいらない保湿剤などで足りることが多いとしています。中くらい以上の症状には、腟に使う女性ホルモンの薬などの選び方があるとしています(Faubion ら, 2020)。ホルモンの薬は、乳がんや、血のかたまりができる病気(血栓症)があるかなどをふまえて、医師が判断するものです。処方が必要なので、自分の判断で使わないでください。また、性交痛の背景に、気持ちの面の理由があることもあります。その場合はローションだけでは足りず、カウンセリングが役に立つとされています(日本産婦人科医会)。
体のことを医師に話すのは、少し勇気がいるかもしれない。でも、それは自分を大切にする修行のひとつなんだ。ひとりで抱えず、頼れるところには頼っていこう。
修行のお題 今週は、水が主成分のローションを用意して、いつもより時間をかけ、いちばん弱い刺激から始めてみよう。終わったら、うるおいと心地よさを5段階でメモしておこう。
参考にした資料
- Faubion SS, Kingsberg SA, Shifren JL, et al.(2020)The 2020 genitourinary syndrome of menopause position statement of The North American Menopause Society. Menopause, 27(9):976–992
- Lindau ST, Schumm LP, Laumann EO, et al.(2007)A study of sexuality and health among older adults in the United States. The New England Journal of Medicine, 357(8):762–774
- Thomas HN, Hess R, Thurston RC(2015)Correlates of Sexual Activity and Satisfaction in Midlife and Older Women. Annals of Family Medicine, 13(4):336–342
- Herbenick D, Reece M, Hensel D, et al.(2011)Association of lubricant use with women's sexual pleasure, sexual satisfaction, and genital symptoms. The Journal of Sexual Medicine, 8(1):202–212
- Jorge CH, Bø K, Chiazuto Catai C, et al.(2024)Pelvic floor muscle training as treatment for female sexual dysfunction: a systematic review and meta-analysis. American Journal of Obstetrics and Gynecology, 231(1):51–66.e1
- Leiblum S, Bachmann G, Kemmann E, et al.(1983)Vaginal atrophy in the postmenopausal woman. The importance of sexual activity and hormones. JAMA, 249(16):2195–2198
- 日本産婦人科医会「閉経して5年もたつのに、時々、下着に少し血がつきます。どうしたんでしょうか。」
- 日本産婦人科医会「性交痛があります。どうしたらいいですか」