40代からのオナニー道(男性編)
⏱ 読む時間の目安:約7分
40代を過ぎると、「前と感じが違う」と気づく場面が増えてきます。でも、それは道の終わりではなく、道の景色が変わっただけです。このページでは、年齢とともに起きる変化を研究で確かめます。そのうえで、これからの一人時間をもっと深く楽しむ工夫を紹介します。
ようこそ。変化に気づけるのは、あなたが自分のからだをよく見てきた証拠なんですよ。変わることを怖がらず、今のからだに合う楽しみ方を一緒に探してみましょうね。
年齢とともに変わること
「MSDマニュアル家庭版」は、医療者向けの解説書をもとにした、一般の人向けの資料です。そこでは、年齢による変化を次のようにまとめています(MSDマニュアル家庭版, 2025)。
- 勃起:勃起の回数、続く時間、硬さは、大人になってから少しずつ落ちていきます。
- 射精後の回復:射精のあと、次に勃起できるまでの時間(不応期)が長くなります。
- 射精:精液の量が減り、射精の感覚が弱くなることがあります。射精をともなわないオーガズムが起きることもあります。
- 男性ホルモン(テストステロン):20代ごろから、平均で1年に1〜2%ずつ減っていくとされています。減り方には、人によって大きな差があります。
刺激への感じ方が変わることで、射精までにかかる時間が長くなる人もいます。これは「衰え」だけではありません。ゆっくり味わえる時間が増えた、と見ることもできます。
男性ホルモンが減ると、だるさ、気分の落ち込み、ほてりや汗、性欲の低下などが重なることがあります。この状態を、いわゆる男性更年期障害(LOH症候群、加齢男性性腺機能低下症候群)と呼びます。女性の閉経のような急な変化ではなく、中年以降にゆるやかに減るのが特徴です。いつ症状が出るかは、人によって違います(日本内分泌学会)。
ヨーロッパの40代から70代の男性3,369人を調べた研究があります。朝の勃起が減る、性欲が落ちる、勃起しにくいという3つの性的な症状が、男性ホルモンの少なさと最もはっきり結びついていました(Wu ら, 2010)。
Wu ら(2010)で分かること:男性更年期障害を見分ける手がかりとして、性的な症状が大事だということ。限界:ある時点で1回調べた研究で、対象はヨーロッパの男性です。日本人に同じ基準がそのまま当てはまるかは分かっていません。
前立腺との関係
ぼうこうの下にある男性の器官(前立腺)について、「射精の回数が多いと前立腺にいい」という話を聞いたことがあるかもしれません。アメリカの男性31,925人を長い期間追いかけた研究があります。月に21回以上射精していた人は、月4〜7回の人に比べて、のちに前立腺がんと診断される割合が低い傾向がありました。40代のときの回数で比べると、その差はおよそ2割でした(Rider ら, 2016)。
Rider ら(2016)で分かること:射精の回数が多い人ほど、前立腺がんが少ないという「関係」があったこと。限界:回数は、本人の記憶をもとに自分で答えたものです。関係が見られたのは、主に進み方のゆっくりしたがんでした。射精すればがんを防げる、という原因と結果までは示されていません。
前立腺は年齢とともに大きくなりやすいです。70代では10人に1人以上が、前立腺が大きくなって尿が出にくくなる病気(前立腺肥大症)と診断されます(日本泌尿器科学会)。尿が出にくい、勢いが弱い、夜に何度もトイレに起きる、残った感じがする、といった症状があるときもあります。そのときは、オナニーで様子を見るのではなく、まず泌尿器科で相談しましょう。射精のときの痛みや、精液に血が混じるときも同じです。
勃起の悩みは、心臓と血管のサインかもしれない
勃起は、血管がしなやかに広がって血液が流れ込むことで起きます。そのため、勃起の変化が、全身の血管の変化を映していることがあります。アメリカの研究で、はじめは心臓や血管の病気がなかった男性を追いかけました。すると、新しく勃起の悩みが出た人は、出なかった人に比べて、その後の心臓や血管の病気が約1.25倍多く起きていました。たとえば、心臓の血管がつまる病気(心筋梗塞)などです(Thompson ら, 2005)。
Thompson ら(2005)で分かること:勃起の悩みが、心臓や血管の病気の早めのサインになりうること。限界:前立腺についての別の研究に参加した男性のデータを、後から分析したものです。勃起の悩みが病気を起こす、という意味ではありません。
生活習慣との関係も調べられています。くらべる形で行った6つの試験(740人)をまとめた研究があります。体重を減らす運動や食事の見直しなどで、勃起の状態を点数にした質問票(IIEF-5、25点満点)が、平均で約2.4〜2.7点上がっていました(Gupta ら, 2011)。ただし、試験の数が少なく、内容もばらばらです。運動、十分な眠り、禁煙、お酒を控えめにすることは、心臓や血管のためにもなります。無理なく始められる一歩です。
勃起の変化は、からだからのお便りのようなものなんですよ。恥ずかしがらずに受け取って、必要なら体の点検に行ってみてくださいね。
楽しみ方を深める工夫
- 時間をかける:年齢とともに興奮が高まるまでの時間が長くなるのは、自然なことです。急がず、からだ全体の感覚を味わう時間にしましょう。
- ローションを使う:皮膚の乾燥や、こすれることによる痛みを防ぎます。肌に合うものを選び、かゆみや赤みが出たら使うのをやめましょう。
- 刺激を強くしすぎない:強くにぎる、速くこするといった刺激に慣れすぎると、ほかの刺激で感じにくくなることがあります。やさしい刺激から始めるのが基本です。
- おしりの下の筋肉(骨盤底筋)をきたえる:おしりの下で、ハンモックのように内臓を支えている筋肉の運動です。おしっこを途中で止めるときに使う筋肉を、数秒しめてゆるめます。勃起の悩みがある男性55人で、くらべる試験が行われました。この筋肉の運動と指導を続けたところ、40%の人の勃起の点数が、ふつうの範囲に戻りました(Dorey ら, 2004)。ただ、人数が少なく、期間も短い研究です。悩みのない人に同じ変化があるかは分かっていません。
- 射精にこだわらない:射精をゴールにせず、途中の心地よさそのものを楽しむのもひとつの道です。射精をともなわないオーガズムもあります(MSDマニュアル家庭版, 2025)。
- 記録で自分の変化を知る:日付、かけた時間、心地よさ、朝の勃起があったかどうかなどをメモしましょう。体調や生活との関係が見えてきます。病院に行くときの材料にもなります。
若いころの自分と比べなくていいんですよ。今のあなたのからだに合うペースこそが、あなただけのオナニー道なんです。
受診の目安と、何科に行くか
- 勃起しにくい状態が続く、朝の勃起がほとんどなくなった → 泌尿器科(勃起の悩みの外来「ED外来」や、男性更年期外来のある医療機関も)
- だるさ、気分の落ち込み、ほてり、性欲の低下が重なる → 泌尿器科(男性更年期外来)。男性ホルモンは、午前中に血をとって調べるのが一般的です
- 尿の出にくさ、夜のトイレ、射精のときの痛み、精液に血が混じる → 泌尿器科
- 胸の痛みや息切れがある、高血圧・糖尿病・脂質の異常を指摘されている → 内科や、心臓と血管をみる内科(循環器内科)でも相談
勃起の悩みの治療薬(ED治療薬)や、男性ホルモンを補う治療は、医師の診察と処方が必要です。心臓の薬と一緒に使えないものもあります。自分の判断で使わないでください。
修行のお題 今週、いつもより10分長く時間をとり、ローションを使って、やさしい刺激だけで過ごしてみてください。終わったら、かけた時間と心地よさを5段階で記録してみてくださいね。
参考にした資料
- Wu FC, Tajar A, Beynon JM, et al.(2010)Identification of late-onset hypogonadism in middle-aged and elderly men. The New England Journal of Medicine, 363(2):123–135
- Rider JR, Wilson KM, Sinnott JA, et al.(2016)Ejaculation Frequency and Risk of Prostate Cancer: Updated Results with an Additional Decade of Follow-up. European Urology, 70(6):974–982
- Thompson IM, Tangen CM, Goodman PJ, et al.(2005)Erectile dysfunction and subsequent cardiovascular disease. JAMA, 294(23):2996–3002
- Gupta BP, Murad MH, Clifton MM, et al.(2011)The effect of lifestyle modification and cardiovascular risk factor reduction on erectile dysfunction. Archives of Internal Medicine, 171(20):1797–1803
- Dorey G, Speakman M, Feneley R, et al.(2004)Randomised controlled trial of pelvic floor muscle exercises and manometric biofeedback for erectile dysfunction. British Journal of General Practice, 54(508):819–825
- MSDマニュアル家庭版(2025年2月改訂)男性の生殖器系に対する加齢の影響
- 日本内分泌学会「男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)」一般の皆様へ
- 日本泌尿器科学会「尿が出にくい・尿の勢いが弱い・尿をするのに時間がかかる」一般のみなさまへ